For Grieving
あなたに会えると信じていました
術はわからなくても。
愛する人を亡くした、あなたへ。
20年の日記から生まれた、一冊の本があります。
散り散り 砕け 波にはこばれ たどりついた最果ての ちいさなちいさな島で ひとつひとつをかみしめるように たいせつにひろいあつめても わたしには重すぎて ひとつひとつが あまりにうつくしく かがやいて ちいさなちいさな ひとかけら その可能性の重みに 耐えられない すべりおちて のがして またおいかける さらわれてしまわぬように それだけの日々を わたしは愛しいと もどってはこられない それでも叫ばずにはいられない もういちどあいたい、と きっと それがかつてどんな姿だったか ばらばらに砕ける前の そのゆめの形を おぼろげにしってはいても わたしにはくもをつかむようなはなし ひたすらに両足を焦がしながら ひたすらにこの道を歩き ひたすらに目をこらしながら ひたすらにおいもとめる あなたのおもかげ あなたのゆめの あなただけがもってたもの あなたごと こなごなに くだけてしまったのだとしても わたしはまだ こうしてひろいあつめている あなたがすきだったものをしって あなたがたいせつにしてたものをたいせつにおもって あなたがよりそってほしいときによりそって そんな理想論は あなたの存在ごとくだけてしまったのだとしても わたしはこうして 両足と胸と脳みそを焦がして もう 秋になってしまうよ わたしたちはきっとたくさんのひとたちのなかからみいだされそしてわかりわかりあいわかちあいわかれいずれまたあえる そんなところだろう けっきょくはあなたのことすきだよ さようなら でもまたあえるから そのときまた、ね
あなたに 会えるとしんじていました 術はわからなくても。 いま わたしの目の前に浮かぶのはあなたへの道。 くり返し 繰り返し 祈り 近づけることへのよろこび そしてまた会えた。 真実の姿で。 ねぇ ひとしれずないてたあの花は 語りかけていたよ たとえぼろぼろになって打ち捨てられたとしても このこころは奪えないと。 あなたは叫んで。 いま このとき その声で。 わたしを呼んで。 胸をひらいて 泣いて ずっととどくとしんじてた あなたに会えて確信に変わった 終りのない祈り くり返し愛にゅくよ 誰にもうばえないこのこころをもって
愛する人がいなくなった。
もう一度、声が聞きたい。
「待ってるから」という言葉が、まだ耳に残っている。会えると信じていた。でも、どうすれば会えるのか、術はわからなかった。
この本の著者・雛瀬ななは、大切な人との別れを繰り返し経験しながら、16歳から20年にわたって詩と日記を書き続けました。その言葉は、喪失のただ中で、祈るように綴られたものです。
『インサイドアウト』は、グリーフの底から、祈りへ、そしてまた出逢いへと至る旅路の記録です。
グリーフとは、失った後も続く愛の形です。会えなくなっても、声は届く——著者はそう信じて書き続けました。
どうして愛弥ちゃんのこと、しんじられなかったんだろう……。 あれだけ、こころの底から、ななに理解を示してくれていた愛弥ちゃんのこと……。 まえ、ひさしぶりに夕方ねむりにおちかけたとき……。「待ってるから。」って、ささやきかけてくれた女の子の声は……愛弥ちゃん……だよね? なな、ほんとにほんとに、いまはしんじられるの……。可笑しいくらい。
会いたいだけ 会える わけじゃない いい時間ばかり すごせる わけじゃない それでも手放したくない それが答えでいいでしょう? いまのところの答えは また次の問いにつながってく 何百回かやってみても きっと最初のきもちに もどれる どんなに遠回りしてもまた あなたにたどり着く ウソツキな運命でも ほら あなたに出逢えた それだけでもぉ 充分。
どんなに遠回りしてもまた
あなたにたどり着く
病と喪失のなかで綴られた
小さきものの日記であった。
分離から統合へ
さみしさから感謝へ
渇望から祈りへ
困難のなかで自身の気持ちを大切にするという信念を貫き、
目を背けたくなるような真実を自分のものとして愛し、
視点を選び取ることで認識と経験という
自身の人生を選び取った——真実と事実の記録。
初い花
蹲っていた体がうずきだして 走った 躓きながらも どうしてわたしは ねがい いのり ひとり 光から閉ざされないよう ただ待っていたのだろう あの光は ここに降り注いで 地上を温め 草も木も あのちから目指し まっすぐに 伸びてゆくのに 駆け出したわたしをまっていてくれた 朝つゆにぬれた あらたな芽が ここにとどく光をおしえてくれる あなたが いてくれる 冬に竦んでいた脚は 走った まっすぐに わたしたちの目指すもの あのちから目指し 追いかけた 胸に刻んだ友と 腕に刻んだ刻と すべてつれだしてかけてゆく あの光は 細くとぎれてしまうような 儚いものではなく もっと もっとも 力強い輝きと轟音で この世界に迎え入れられる おおいなるものへ おおいなる力へ わたしをまっていてくれた うすももいろの初い花 そっとちかづくと やさしい風が吹き あたたかさとくすぐったさに おもわずほほ笑む わたしたちは てにいれた 秘かにひそやかに この季節をてにいれた
この旅路に、
寄り添う一冊。
インサイドアウト「内なる子ども」を癒す〜Drop+Kiss…+より〜
著:雛瀬なな 編:敷島真也 監:内田裕之(Ph.D.)
株式会社andnp刊 / 上巻392頁・下巻416頁 / 各¥1,980
全国書店・オンライン書店でお取り扱いしています。